|
彦根市立病院 緩和ケア科
黒丸尊治
まず第一演題の「長期入院治療を要する悪性疾患患児を抱えた母親の心理(T)」を松下年子先生に発表して頂きました。これは悪性疾患患児を看る母親の心理的変化を、POMSなどを通して経時的に追跡調査した結果を発表したものだった。その結果として「活気」が全般的に低いという特徴があり、また女児の母親は男児の母親よりも有意に「活気」が低く、夫と同居しているケースでは、同居していないケースよりも有意に「疲労」が少なく、また夫がサポーターの場合、そうでない場合に比べ有意に「怒り−敵意」が低かったというものだった。患児の性別の違いにより、母親の「活気」に変化が見られるというのはとても興味深く、このような母親の精神的サポートを考えるうえにおいても、重要な要因になるのではと思われた。
次の第二演題は、宮崎貴久子先生による「患者療養中の状態が死別後の家族に与える影響:一般病棟の緩和ケアにおける家族の経時的研究」であった。死別体験が家族に与える影響や患者療養中の状態と死別後に家族が感じている不安の関係性について、面接やSTAIを通して調査検討したものだった。その結果、きちっとした病状説明が患者にされている場合には、そうでない患者と比べ、死後二ヶ月後の家族の状態不安は有意に低いというものだったが、1年後でも配偶者の状態不安にはばらつきが見られ、個別のケアが必要であるというものだった。患者の症状コントロールや精神的ケアが十分になされ、患者が穏やかな状態で最後を迎えられることは重要だが、それでも後々まで家族の心に大きな影響を残す可能性があると思われた。
三番目の演題は、「遺族のためのサポートグループにおける泣くこと語ることの意味」と題して、広瀬寛子先生が発表された。これはサポートグループに4回以上参加した遺族の、グループ中の逐語録やグループ後のレビュー、感想文を用いて泣くことと語ることの意味を質的に分析したものだった。その結果、泣いたり語ったりすることによる感情表出は、同様の経験をしている人たちとのかかわりの中で行われることに意味がある、様々な悲嘆の段階にある人たちが参加することでより促進されるということが明らかになったと結論づけている。このような質的研究は、量的研究よりもかなりの時間と労力がかかるが、緩和ケア領域では特に重要な研究方法だと思っている。今後もこのような研究が多く出てくることを期待したい。
|