第10回日本緩和医療学会・第18回日本サイコオンコロジー学会総会合同大会
市民公開シンポジウムQ&A

−望ましい緩和ケア、心のケアとは− がん患者さんの治療選択への道しるべ

御挨拶
日本緩和医療学会・サイコオンコロジー学会総会合同大会長
国立がんセンター 総長 垣添 忠生


 第10回日本緩和医療学会、第18回日本サイコオンコロジー学会合同大会の大会長を務めさせていただきました。最終日、7月2日の午後、―望ましい緩和ケア、心のケアとは?― と題して市民公開シンポジウムを開催致しました。多くの方々にご参加いただき、主催者として嬉しく思っています。
 今、日本では年間に31万人近い方ががんで亡くなっています。がんに罹った人の約半数が治らないで亡くなっていることになります。こういった状態の患者さんの身体的な苦痛の改善、精神的な苦悩の軽減を目指した学問も日々、進歩しています。そして、こうしたがん緩和医療、サイコオンコロジーに関心をもつ医師、看護師、薬剤師、技師、臨床心理士など、さまざまな職種に身を置く人が急速に増えてきました。今回の合同大会でも、過去最多数の演題が発表され、かつ参加者、新規入会者数も記録的でした。3,400人以上の参加者が集られ、しかも他の学会に比して参加者が熱心ですので、会場が狭くて迷惑をかける事態となりました。そのくらい熱心な参加者が早朝から夜遅くまで勉強する3日間でしたが、主催者としてその熱気に大いに励まされました。
 これからのわが国のがん緩和医療、サイコオンコロジーは確実に変わっていきます。医療の現場に問題があるとしたら、医療者と患者さんと、そして行政が力を併せて、同じ方向に向って改善、改革の努力をすることが大切だ、と私は考えています。がん緩和医療、サイコオンコロジーも正にその方向に進むことが明確になってきた、と強く感じています。  こうした学会の際に、市民公開シンポジウムなどを開催することが定着してきました。こうした機会に、医療従事者が患者さんを含めた市民と直接話し合い、多くの問題点に共通の理解を得ることは誠に大切だと私は考えています。本シンポジウムも、優れた演者の熱心な講演と参加された皆様、そして司会の両先生の巧みな采配で活発な討論が展開されたことを本当に嬉しく思っています。

市民講座:会場からの質問事項
 市民公開講座に参加して頂き、ありがとうございました。時間がなくなって会場から回収した質問用紙に記載されてあった内容の全てを討論することが出来ませんでした。沢山の真剣な質問を無視することは司会者として出来ませんでした。そこで、講師の先生方にお願いして回答を頂きましたので、当日討論した質問事項は一部省略してありますが、「質問」と「お答」の形でまとめました。会場での討議であれば、一つの質問に複数の講師の先生方からお答を頂くことが出来、質疑・応答の質が深まったことでしょうが、講演順に各講師のお答を記載しました。ご参考にして頂ければ幸甚です。

複数の講師への質問と紙上での回答
男性、64歳。先生方ご自身に近い将来がんが見つかり、治療法がない状態になったとしたら、どのようにしますか(何処で療養したいですか)。その理由もお聞かせ下さい。
女性、34歳。先生方がもしがんの終末期にあったとしたら、どこでの療養を希望されますか。
内富可能であれば仕事を続けながら、自宅で過ごしたい。できるだけこれまでの通常生活に近い状態を維持したいと考えています。それが叶わない場合は、自宅に近い家族の面会が可能な施設を選ぶので、現在であれば国立がんセンター東病院になります。
柏木できるだけ家にいたいと思います。どうしても自宅での療養が難しいとなれば、躊躇なくホスピスへ入院したいと思います。
男性、62歳。市民として、医師に対してはすでにいろいろな希望、期待があると思います。しかし、チームとしてがん医療を提供するためには、どのような職種にどのような活動をしてほしいとお考えですか。
内富患者さん、ご家族の意向は多様であることがわかってきました。担当医、緩和ケア医、精神科医、心理士、ソーシャルワーカー、栄養士、リハビリ担当者を始めいろいろな専門職が、いろいろな希望にこたえられるような相談窓口とチーム作りを整えたいと考えています。そういったチームを備えたがん専門施設とご自身の地域の医療、福祉と連携できるのが理想と考えています。
柏木医師、ナースの他に、ソーシャルワーカー、薬剤師、栄養士、理学療法士、作業療法士、宗教家などが必要と思います。
女性、52歳。国民の4人に1人ががんになるといわれています。これだけ身近になってきたがんですが、家族や友人をはじめ、一般市民はまだがん患者とどう付き合ってよいのか、分からないことが多いと思います。たとえば身近にがん患者さんがいるとき、家族として、友人として、隣人として、どのような手助け、心配りが患者さんの役にたつとお考えですか。具体的なお考えがあれば教えていただけますか。
内富寄り添うを基本にしたいと考えます。積極的に何か働きかけるというよりは、患者さんが望むときに連絡がつき、返事ができる態勢作りに心を配りたいと考えます。
柏木がん患者さんはその病期によって気持ちが変わります。「気持ちの理解」が助けの基本です。励ましが必要な時は励ましを、励ましを控えるべき時には控えるということが大切と思います。
男性、46歳。緩和ケア病棟、ホスピスケア、在宅ターミナルケアは提供者によってケアの質に格差があると思いますが、どのように考えられますか。家族にこうしたケアが必要になった時、良いケアの提供者はどうやって見つければいいのでしょうか。選択の時のポイントを教えて下さい。
小迫緩和ケア病棟であってもケア提供者個人の能力差はあります。全体のチームの協力と教育によって常に自己啓発されるべきだと考えます。家族としても緩和ケアに対しては、チームの一員として患者さんにどのようにケアしてほしいかを、普段から抵抗なく話せる関係性が第一で、家族の方と話すことを進んで受け入れるスタッフがいるかどうかはポイントの一つだと思います。
柏木現在ケアの質に格差があることは確かです。それぞれに関わっているスタッフがどこでも同じような質のケアを提供できるよう、普段の努力を重ねることが大切だと思います。また、厚生労働省やそれぞれの協会、学会が一定の基準を持っているプログラムを認定するということも重要と思います。ケアが必要になった時はその時点でかかっている機関に遠慮なく相談することです。最近ではインターネットでの情報も豊富になっていますのでそれを利用するのも良いと思います。
押川現質の差もありますが、合う合わないもあると思います。在宅ターミナルの経験を多く持つ提供者のほうが対応はできるのかもしれませんが・・・。こればかりは人間としてのかかわりですので、付き合ってみないことには分からない部分も多々あると思います。
女性、24歳。本日は有難うございました。遺族ケアとしてはどのようなことをするのでしょうか?
内富周囲からの暖かい支援がある中で故人を思い出す機会を設けることは、ストレス軽減につながると考えられております。心の許せる方々に囲まれて無理なく思い出を語り感情を共有することは助けになるでしょう。一周忌をも越えて不眠や食思不振(食欲がないこと)などにより体重が増えず体調の回復が思わしくない場合は専門医のアドバイスも役に立つでしょう。
柏木亡くなられたあと、電話をかける、手紙を書く、訪問する、遺族会を開く、定期的にグループに参加してもらう、個人的な死別カウンセリングをする、専門家を紹介する・・・・などです。
押川小児はお通夜かお葬式に必ず参列し、ケアを行います。他の患者様に関しては、1年に100人以上も訪問患者様がお亡くなりになっておりますので、亡くなるまでに、残されるご家族がいかに後悔のないケアができるかに力を入れて、その後のケアは特別に行っておりません。

内富庸介先生への質問と紙上での回答
女性、54歳。がんの治療や緩和ケアが、まだ日本全国、どこでも同じように受けられるというものでもなさそうです。今日、先生方がお話くださったようなケアを、どこでも受けられるようにするために、それぞれの立場からご提案があればおっしゃっていただけますか。
内富各地域にがん拠点病院の設置とがん支援地域医療・福祉ネットワークの構築を展開したいと考えています。
男性、45歳。家族、遺族の心のケアについてお聞きしたい。私の父はがんと診断されて1ヶ月足らずで亡くなり、残された家族は心の整理がなかなか上手くつきませんでした。私はうつ状態が長く残ってしまいました。多くのがんでは闘病期間がある程度長くあるので、心の整理がつくのでしょうか。
内富各とても性急な病気の経過ですので、喪失の衝撃は、交通事故のように大きいはずです。不眠や食思不振、集中困難、不快な場面を思い出して動悸がしたり、息苦しくなったり、故人を思い出して暫し思いがさまよったり、また回避的になったりして、大変な時期を過ごされていると拝察いたします。病気の経過が緩やかな場合では、多くの方は1年をめどに少しづつ生活を立て直されます。いろいろな思いはめぐり完全ではないのですが、年月を重ねて整理をつけられます。しかしこれはあくまでも目安です。性急に、完全に心を整理することを求めるとかえって負担になりますのでご自分のペースであせらず月日を重ねられるとよいでしょう。
女性、40代。家族を癌で亡くし、闘病中にリエゾンを体験しました。緩和ケアサポートが癌と分かったときから欲しいと思っています。お話の中で、心のケアをする人としてご家族、友人、担当医をあげられておられますが、リエゾンの必要性はございませんか?又、千葉県がんセンターでは「患者さん相談窓口と医療地域医療連携室」を一つの場に設けて、患者さんとご家族への治療時からの緩和ケアを提供しています。私はこのような場がすべての病院に必要だと感じていますが、いかがでしょうか?
内富まったくその通りだと思います。メンタルケアのリエゾン(連携)は、精神科医、臨床心理士、リエゾン精神看護師などが積極的に展開を始めていますが、すべての施設に常駐するのが理想だと考えています。これを目標にして、人材育成にも励んでおります。
女性、31歳。悪性腫瘍を指摘され、手術を受ける患者さんに対しての看護師にのぞむ事はどんなものがありますか?術前、術後の訪問につなげていきたいので、患者さんの心理について知りたい。
内富手術前には、がんそのものよりも手術や麻酔そのものへの不安が高まります。麻酔中は他人に自らを絶対的に預ける経験となりますので、手術を担当される麻酔科医や手術を担当する看護師の訪問は、恐怖を和らげ、手術や麻酔への理解を助け気持ちの整理につなげることができるでしょう。手術を無事におえ、一区切りついた後には医療者に加え周囲の同室者や同病者に支えられて少し過剰な支援環境におかれますので、一般的には不安は抑えられます。しかし、退院後ひとり自宅にいると大海に放り出された感覚に陥いり、不安になる方が少なくなく、独りぼっちに感じ、がん患者として疎外感や孤独感を痛感される方がおられます。心理的危機はむしろこの時期に訪れますので、退院後に医療者だけでなく同じ病気の方との接点を維持する目的で患者会やサポートグループに参加されるのも良いでしょう。概ね、退院後の不安などのストレスは一年が目安ですので、患者さんの意向を踏まえた上で、意識して病気をよく知る医療者や患者団体と接点を多く作るよう、アドバイスするのも良いでしょう。
女性、70歳。緩和ケアや心のケアを受けるにはどうしたらよいのでしょうか。内富先生が、インターネットで緩和医療、ホスピス、総合病院精神医学会などで検索してみることを提案しておられたように記憶しております。
女性、64歳。サイコオンコロジーの専門家がいる病院に通院していますが、どのようにしたらサイコオンコロジーの専門家にみていただけるのでしょうか。
女性、55歳。とても勉強になりました。ところで、サイコオンコロジ−の専門家がいる病院を捜すにはどうすればよいのでしょうか。
内富国立がんセンターのホームページや日本総合病院精神医学会のホームページが参考になるでしょう。インターネットに不慣れな場合は、まず、担当医、看護師に尋ねてみましょう。病院相談窓口に相談されることもお勧めいたします。各施設の医事課職員やソーシャルワーカーが担当しますが、患者さんのご希望に沿った最適の施設を紹介されるでしょう。
女性、32歳。笑いが免疫力を高めるとか、明るく前向きに考えた方が免疫力が高まるとか、世間では心のありようと免疫力とがんになりやすさとの関連が話題になりますが、精神と免疫あるいは発ガンとの関連はどのくらい研究されているのでしょうか。
女性、27歳。前向きに考えることが免疫力をあげるとか、笑いがNK細胞を活性化する、などといわれますが、とても明るい気分になれない人たちはかえってこのことがプレッシャーになって苦しんでいるようです。家族や知人としてはどのように接すればよいのでしょうか。
内富これまでのところ、明るい態度や性格が発がんやがんの進展について明らかに関連があるとする科学的根拠は十分には得られておりません。したがって、現時点では無理に自分を追い込むことなく自分らしく健康な生活を維持することを心がけ、ただしうつ病など落ち込みすぎだけには十分注意しましょう。時に、自分はもともと明るくないからがんになったんだ、がんが再発したんだと思われる方がおられますが、この点について明らかな科学的根拠はありません。したがって、自分のせいでがんになったなどとご自身を責めるような考えは持たないようにしましょう。
女性、27歳。医師に「明るく前向きに」といわれて、でもそうなれないのでよけいに落ち込むという患者さんの話をときどき聞きますが、明るくなれないときに、自分ではどのように対処したらよいのでしょうか。
内富落ち込んだときに軽い気晴らしや周囲からの励ましなどで回復するときはまだよいのですが、それが無効でかえって落ち込んで2週間以上続くときには担当医などに相談しましょう。専門医などの受診を含めアドバイスを受けるよう努めましょう。

小迫冨美恵先生への質問と紙上での回答
女性、30歳。緩和ケア病棟での緩和ケアと一般病棟で緩和ケアチームが介入しての緩和ケアの大きな違いはなんですか。利点、欠点を教えて下さい。告知されていない患者さんに対して緩和ケアチームに依頼があった場合、患者さんとどのように関わっていくのですか?
小迫緩和ケア病棟では、緩和ケアを受ける患者さんが集中して療養しており、病棟全体の目標が緩和ケア一つに集約できるメリットがありますが、主治医や一般病棟から離れることに抵抗を持つ方もいます。一般病棟では、多くの場合急性期の患者さんと混合であり、療養環境としても、ケア提供のリズムにおいてもジレンマが起こりやすいのが難点です。緩和ケアチームの介入は、患者さん・ご家族のケアもスタッフのサポートも行います。一般病棟のまま、主治医との関係を継続しながら療養できるのは、患者さんにとってはメリットです。
病名告知されていない患者さんでも、ご本人の病状の認識にあわせて苦痛を緩和するかかわりは可能です。告知されてないことが、ご本人を苦しめているのであれば、真実の開示について家族や医療スタッフと話し合っていきます。
女性、26歳。病棟ナースからCNS(専門看護師)への依頼[看護コンサルテーション]の仕方について。決まった書式などあるのですか?それとも、直接口頭や Telなどで相談を受けておられるのですか?私の病院にはCNSがいません。まず、病棟単位、小さなところから出来る、看護の充実について何かお考えを聞かせて下さい。
小迫アクセスを容易にするため、ラウンド時に直接話したり、電話でも相談を受けています。正式なコンサルテーションは、A4書式の依頼用紙を使っています。(上半分に相談内容、下半分にお答え欄)ただし、書面のみではなく、必ず相談者との話し合いをしています。
病棟スタッフ一人ひとりが、自分が関心のあるケア技術について1つでも得意なことを見つけること。「これについては○○さんに聞いてみよう」と頼りにされるように、普段から情報収集や訓練を積み重ねておくと看護の幅が豊かになります。
女性、24歳。1) 緩和ケアチームのスタッフとして、他の医療スタッフにもっと理解して欲しい協力して欲しいと思う事がありますか?
2) 私は薬学の学生ですが、緩和ケアチームに薬剤師が加わっている事は少ないように思います。薬剤師にもっと積極的に関わって欲しいところはありますか?
3) 在宅ケアを行う場合、薬剤師とは相談したり、方針を決めていくことはないのでしょうか?偏った質問ですみませんが宜しくお願いします。
小迫1) 緩和ケアは、「一部の人がかかわる終末期のケア」ではないこと。
2) 緩和ケアにとって薬物療法のメリットを最大に生かすためにも薬剤師の関与は重要です。薬剤師単独の活動ではなく、医療チームの中で医師や看護師、患者さん・ご家族とのダイナミックな関係を体験して下さい。
3) 在宅ケア移行期にも薬剤師と症状緩和法について話し合い、より簡便で安全な方法を検討しています。
年齢・性別無記入。緩和ケアチームを発足して2年目になります。看護師です。5点の質問をお願いします。当院では発足後も症例検討依頼がなく、今後各病棟をラウンドし、症例を発掘していく方向となりました。
1) 依頼があがってこない場合の宣伝方法で何か良いものは[良い方法]ありますか?
2) ラウンド症例検討時、どの位の時間がかかりますか?
3) 看護師からの依頼が多かったようですが、依頼内容は主治医に伝えますか?その際に気をつけている事はありますか?
4) 「患者さん・ご家族からの依頼がない事が課題」との事でしたが、そのためのアプローチ方法として具体的に考えている事がありましたら教えて下さい。
小迫1) 緩和ケアチームのメンバーがかかわると何ができるのかを紹介する勉強会を行ったり、依頼を待つのではなく、逆に病棟や診療科のカンファレンスに参加する方法があります。緩和ケアチームが相手の現状を知ることが第一歩だと思います。
2) ラウンドは、5病棟くらいで1時間半かかります。しかし、1ケースにかけられる時間が短いので、重点的に検討を要するケースは、別の日にカンファレンスを設けます。
3) 依頼方法は、質問2のお答えを参照して下さい。ナースが依頼するときには、主治医にも緩和ケアチームに依頼することを伝えています。診療にかかわることを提言する場合は、緩和ケア専門医と主治医で話し合っています。
4) 患者・家族からの依頼については、病院で緩和ケアチームの診療が受けられることのポスター掲示を行い、問い合わせ先を明示します。直接診療を行う場合は、主治医から紹介していただき、同意を得ていきます。
男性、57歳。切除不能の進行がんで他の病院(緩和ケアは行っておりません)で、化学療法、放射線療法後の場合に貴院(横浜市立病院)に転院し、緩和ケアのみを受けることは可能ですか。また、この場合に健康保険が適用されますか。個別のケースへのご回答が困難であれば、一般論として可能な範囲でご回答いただければ幸いです。
小迫一般的に転院にあたっては、相手先の病院の緩和ケア担当者宛に主治医からの紹介状が必要です。病院によっては、「緩和ケア科」や「緩和ケア病棟」がある場合は、「緩和ケア外来」があるので、そこを受診します。医療費は保険適用となります。診療科の窓口がわからない場合は、まず今かかっている科と同様の診療科宛に紹介状をいただき、院内で緩和ケアチームとその科の主治医が協力して診療を行うことは、可能です。
女性、38歳。がんになったときに、どこに相談してよいかわからない、というような漠然とした相談も、専門看護師の方は受けてくれるのでしょうか。専門看護師に相談したいときにはどこに連絡したらよいのでしょう。
女性、55歳。横浜市民病院の患者でなくても、専門看護師に相談にのってもらえるのですか。
女性、60歳。どのようながんの専門医がどこにいるかという情報が欲しいときに、専門看護師は相談にのってくれるのですか。
小迫現在は、専門看護師が所属している病院以外の方のご相談を受けることはないのですが、専門看護師がこういった相談窓口を設けることも、将来可能かもしれません。社団法人日本看護協会では、どこの病院に専門看護師がいるかの情報をもっております(ホームページ参照
男性、41歳。緩和医療の最大の障害は緩和ケアに興味を持たない医療者(特に医師)の協力が得られないことだと考えています。特に一般病院では著明だと思いますが、何か、このような医師を改心させる策略がありませんでしょうか。
小迫緩和ケアチームや関心のある人がケアに苦渋していても、他の医療者の協力が得られないことが、その患者さんを苦しめる最大の問題ということもあります。特に主治医に、不得意なことを強制するとますます苦境に立たされ、協力が得られません。コンサルテーションの提案に協力していただくのが一番ですが、無理な場合、緩和ケアチームの直接診療ケースとして委譲していただくのも一つだと思います。また、緩和ケア担当者は、そのような苦境を救う協力者だということを1例でも体験してもらうように努力しています。
女性、55歳。横浜市民病院と何の関係のない病院で治療を受けていますが、よりよい緩和チームに出会うにはどうしたらよいでしょうか。
男性、58歳。家族が緩和ケアチ−ムがある病院に入院していますが、どのようにしたら緩和ケアチームにみていただけるのでしょうか。
男性、55歳。緩和ケアチ−ムが活動している病院を捜すにはどうすればよいでしょうか。
小迫「日本ホスピス緩和ケア協会」で、緩和ケアを提供できる医療機関の情報が整理されています。インターネットのホームページでリストを見ることができます。医療機関で、医療相談室やソーシャルワーカーに「自分は緩和ケアを受けたい」と相談してみると、緩和ケアに関心の高い病院ならば、必ず何らかの情報を探してくれます。緩和ケアチームのある病院ならば、主治医や看護師に「緩和ケアチームの診療を受けたい」とお話して下さい。緩和ケアチームの問い合わせ先があると思いますので、直接ご家族が尋ねられることも可能だと思います。「日本ホスピス緩和ケア協会」

柏木哲夫先生への質問と紙上での回答
女性、20歳。看護師にユーモアのセンスはあると思いますか?
柏木勿論個人差はあると思いますが、全体として、ユーモアのセンスがなければやっていけない仕事ですし、センスがある人が多いと感じています。
女性、28歳。延命についての積極的な治療ができなくなった患者さんにホスピスの話をしたら「なにもしないところ」という誤解があり、正しく伝える事ができず、困っています。どういうふうにお話すればよいですか?余命について医療者側はあと数ヶ月という診断であるのに対して患者さんは何年とか何十年と理解しており、まだまだ治療が出来ると思っていたり、したいことがあってもまだ先でいいと思っていたりすることがあり、残された時間を大切に使うという選択の手助けが難しいです。どうすればいいのでしょうか
柏木ホスピスではとても積極的な医療行為がなされています。しかし、その積極性が一般病棟では治療と延命に向かいますが、ホスピスでは苦痛の緩和に向かいます。医療者側と患者さんとの予後(病気の経過についての見込み)に対する認識が異なる場合は、少しづつその差を縮める努力を医療者側がする必要があります。「少しづつ」が大切で、「急に」縮めると患者さんはショックを受けます。
女性、25歳。ホスピスはどうもキリスト教のものというイメージがあります。日本人にとってキリスト教はそこまでなじみのあるものに思えません。日本人ならではの死生観に沿ったホスピスというものはありますか?
ホスピスはアメリカなどから輸入された考え方だと聞いています。ホスピスは何年間かの臨床を経ることで、単なる輸入ではなく日本らしいものを持つようになったのでしょうか?海外のホスピスとは違った日本人向けのホスピスの特徴があれば教えて下さい。
柏木ホスピスは歴史的には確かにキリスト教の背景を持っています。今の日本のホスピスを見ますと、キリスト教系、仏教系の他に、特に宗教色のないものまでいろいろです。大学の中でキリスト教系のいわゆるミッションスクールがあり、仏教系の大学があり、無宗教の大学があるのと良く似ています。日本らしいホスピスはどのようなものなのかを探っていくことは、これからの課題だと思います。
女性、26歳。緩和ケアにおける代替療法[音楽療法など]の可能性について教えて下さい。
柏木緩和ケアにおいては、音楽療法、アロマセラピーなどの代替療法は積極的に取り入れています。患者さんによっては、それで慰められ、QOL(生活の質、生命の質)の向上に役立つ場合があります。
男性、28歳。痛みをとるためにモルヒネを使うと意識が不鮮明になることがありますが、これは量が多過ぎるからなるのでしょうか?持続注入ポンプはどのような病院でも可能でしょうか。WHOラダーというものがありますが、現実には必ずしもそのとおりではない気がするのですが、それは間違っているのでしょうか。ガイドラインなどあれば教えていただければ幸いです。宜しくお願いします。
柏木ご質問に関しては、適当なガイドラインを参照していただくのが良いと思います。最新のものでは厚生労働省、日本医師会、日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の協力で出版した「がん緩和ケアに関するマニュアル」が良いと思います。詳しくは、財団のホームページをご覧下さい。
男性、41歳。1) 100km四方にホスピスのない地域病院で働いている者ですが、最期の時に地元ですごすことのほうが、遠方のホスピスに行くよりもbetterと考えて急性期、病院の中で 終末期医療をおこなっています。先生のご意見をお聞かせ下さい。
2) 診療連携という名目での“患者ころがし”がおこっています。患者さんにとって病院や担当医が変わるのは決して良いことではないと考えています。この信念のもと 診断、手術、化学療法などを1人で行なっていますが、時間、体力的にむずかしいと感じる事が多くなってきました。何か良い方法はないでしょうか。患者さんは担当医が変わらないことに肯定的なように思いますが。
柏木1) 将来とも一般病棟で死を迎える人がほとんどと思います。一般病棟でも、Hospice minded care(ホスピスの心を持ったケア)が行われるのが理想だと思います。
2) 可能な限り一人の医師が最期まで診るのがいいと思います。しかし、医師の年齢や他の仕事との兼ね合いでそれが不可能になることも現実と思います。その医師が患者さんを委ねることができる緩和ケアの専門医を持っていることが大切と思います。
女性、55歳。患者さんにとって医師との付き合いはとても緊張し、ストレスの多いものという話をききます。最近ではドクターハラスメントというような言葉もあります。このような状況を改善していくためには、一患者・一市民としてどのようなことができるでしょうか。なにかご提案が先生からおありでしたら、教えていただけますか。
柏木同じような考えを持っておられる市民の方が集まって、例えば「医師との付き合い方を考える会」などを立ち上げ、少しづつ、患者さんの気持ちを医師に伝える努力をしていただくのがいいと思います。
女性、30歳。緩和医療については、医師の理解が足りないと思われますが、医師の意識を変えていくために、どのような戦略があるでしょうか。
柏木1) 医学教育、2) 卒後教育、3) 学会レベルでの啓発運動、4)市民が積極的に発言する、5) メディアを通しての啓発などかと思います。
男性、68歳。ホスピスについての情報を得たいのですが、どうすればよいですか。
柏木日本ホスピス緩和ケア協会のホームページをご覧下さい。
10男性、70歳。痛いといっても聞いてくれない先生の場合には、どのようにしたら良いでしょうか?
柏木担当の看護師さんか、ソーシャルワーカーに相談されるのがいいと思います。

押川真喜子先生への質問と紙上での回答
女性、34歳。在宅で療養されている患者さんは外出の機会が減り、孤立しがちで“煮詰ってくる“のではないかと思います。患者さんの社会性を保つために行っていることはありますか。
押川それは、個々で異なります。外出したくない人もいるわけで、要は、制限をせずになるべく患者さんのやりたい事ができるようなサポートを心掛けております。
女性、50歳。家での死について知りたい(入院1ヶ月で入院費はどのくらいかかるのか)。都内であれば来てくださるのか?
押川入院の費用は個々で異なりますが、最終的には高額医療の範囲内での負担だと思います。但し個室の部屋代は別だと思います。詳しくはソーシャルワーカーにお尋ね下さい。訪問看護は都内で、片道1時間以内なら行っています。
女性、55歳。今はがんではありませんが、将来、回復が望めない状態になったら、在宅で療養したいと思います。どのくらい貯金しておいたらよいものでしょうか。たとえば1年在宅療養するとして、介護費用の目安を教えて下さい。
押川どの程度の資源を使うか、どの程度の医療が必要かでも異なると思います。貯めれるだけ貯めておく事だと思います。
女性、24歳。在宅ケアを行う場合 薬剤師とは相談したり、方針を決めていく事はないのでしょうか。偏った質問ですみませんがよろしくおねがいします(注:この方は小迫先生への質問3と同じ方で、薬学の学生さんです。)
押川私たちは緩和ケアで活躍している薬剤師さんに、薬の事は大いに相談に乗ってもらっています。
女性、27歳。老年期の胃癌のターミナルの患者さんが 症状が緩和し、一時退院しました。しかし、自宅で食事が摂れず、脱水症状で再入院になりました。ご本人、ご家族へは高カロリ−輸液や食事がとれるための手術がすすめられましたが、何もしないで欲しいとご本人とご家族の意見が一致しました。一般病院の病棟なので訪問介入し、退院をすすめています。しかし、ご本人と妻との二人暮らしの事を娘さんが心配してこのままの入院を希望されています。現在、痴呆が進み、ご本人の意志は確認が難しい状態です。
押川何もして欲しくない意思がはっきりして、かつ、苦痛のコントロールができているのなら在宅も選択肢になるとは思います。
男性、50歳。在宅ケアのポイントのなかでの death education(死への準備教育)とはどのようなことを話されるのですか?患者様の死生観、宗教観により、内容が異なると思いますが?
押川近い将来に死が訪れる事を話しますし、ケースバイケースですが、呼吸停止までの様子や、その時にどう対応してあげればいいのかを、具体的に話す事もあります。
女性、28歳。在宅へ向けてご家族の希望は強いが、ご家族が不安で、受け入れが難しい場合など、看護師としてどのように対応(声かけ)をしていけばよいのでしょうか。
押川ご家族の不安が具体的にどこにあるのかを、良く話し合って理解する事が大切だと思います。それが分かれば、その解決に向けて、リソースナース1)や多職種の力も借りると良いと思います。(1)司会者註:聖路加病院の場合は認定看護師、専門看護師などのような専門的な知識を持った集団があり、リソ−スナ−スと呼んでいる)
女性、36歳。在宅看護を実践する中でご家族及び患者さんとの関わりの中で難しかった点、又良かった点[コミュニケーション、ご家族間の関係など]について、小児、成人、各一例づつあれば教えて下さい。
押川文芸春秋から出版した“在宅で死ぬということ”の本を是非お読み下さい。
女性、25歳。なかなか死への受容が行えない患者さん、ご家族に対して、私たち医療者はどのように働きかけていったらいいのでしょうか。
押川受容できないまま、死にたくないと言って死んでいく人も、いていいと私は思っています。
10性別・年齢無記入。押川先生のご講演の中で 「主治医のターミナル判定」の説明の中で緩和ケアが必要だとの言葉がありました。小迫先生のご講演の中には「がんの診断時から 緩和ケアの対象である」の説明があり、ターミナルstageのみに限定されないことであると強く共感しました。その後だったために、より押川先生の言葉が否定的なイメージとして感じました。今回のテーマが「ターミナル」な面が強いことでの発言であったのでしょうか?
訪問看護を今後検討したいナースですが、ケモ(抗癌剤治療)も訪問看護で受けられる症例もあるのでしょうか?もしあれば副作用コントロールに関してマネジメントについて紹介いただければうれしいです。また患者様のプロとしての意識に関して[注:原文のままです]、本当にそうだな、確かにそうだと感激しました。押川先生の辛い体験を聞いて力強く感じられ励まされました。
押川在宅でも化学療法を行った事はあります。但し、A−Port(身体に埋め込んだ輸液のための静脈路装置)など、しっかりしたルートがある場合と、しっかりした介護者がいる場合に制限しています。副作用のコントロールは、施設内となんら変わりありません。
11女性、35歳。私も訪問看護をしています。デイズニーランドよかったです。とてもすてきだと思いますが、ボランテイアですか?
押川ボランティアです。
12女性、28歳。たとえば主婦ががんになり、療養しなくてはならないとき、家事の担い手がなくなって、主婦自身が負い目に感じたり、夫は仕事に多忙で、家族が途方にくれたりそのために家族関係がギクシャクすることがあります。家事の担い手が病気になったときに家事遂行を助けてくれるような、サービスやシステムがあるのでしょうか。
押川れからは40歳以上も癌の場合は、条件付で介護保険の対象になれるようですし、ヘルパ−などを利用する事をお勧めします。

市民公開シンポジウムに参加しての感想
女女性、42歳。私は市民ですが このような医療者とのシンポジウムはとても良い機会で、医療者側の考えを聞くことができ考えが広がります。またぜひ参加したいです。
本日のパシフィコ横浜での講演聴取させて戴きました。有難うございました。看護師の私と看護学生の娘二人との三人で参加させて戴きました。普段から自問自答していた事もあり講演者の先生方の言葉の一つ一つを聞き逃さぬ様に真剣に拝聴させていただきました。特に柏木Dr押川Nsの講演には感動を覚えました。娘二人も未来を背負う看護師になるべく大切なこの時期に緩和ケアについての貴重な講演を拝聴出来た事は素晴らしい経験になったと思います。本当に有難うございました。今後の御活躍も期待しておりますから国民全体の方々の為にも先生方も御身体大切になさってくださる様に陰ながら祈っております。
女性、26歳。柏木先生のスライドとても楽しかったです。私たちのことをまるで孫のように可愛がってくださる患者さんが多いので 患者さんがにこにこされていても、本当に私の関わりでいいのかな?とよく思ってしまってましたが、にこにこしてもらえるのはやっぱりうれしい(ありがたい)ことです。もっともっと患者さんの表情に注目してみようと思えました。ありがとうございます。
女性、35歳。柏木先生のお話しはとても分かりやすく、また重要な講義を有難うございました。私は現在看護師として個人病院で働いています。私もユーモアが大好きで、毎日職場や患者様を笑わせています。私の考え方も先生と同じでユーモアによって人と人との距離が縮まると感じていたので、先生の講義を聞き、とても充実した気持ちになれました。これからもユーモアたっぷり、笑顔をたやさないNSでいたいと思いました。/td>
女性、26歳。押川先生、とても貴重な体験談ありがとうございます。
女性、38歳。押川先生が訪問をして“今でも思い出す事”を私たちに暴露してくれたこと、とても貴重な体験だったんだなと涙が出てきました。自分の至らなかったことを話すことへの勇気とそれについて考えるきっかけを作ってもらえました。又自分の感性につなげることができた講演だと思いました。私もプロの技術をみにつけた在宅看護をしたいと思います。
押川そう感じてくださってうれしいです。