代表世話人の挨拶
ごあいさつ代表世話人 内富庸介
日本サイコオンコロジー学会は、がん患者さんの心の問題を心理学的、社会学的そして行動科学的にアプローチする学術・医療分野に関心をもつ医療従事者や教育者が結集して1986年に創設されました。最終目標は、あらゆる時期のがん患者さん、ご家族の方々に望まれる最適の心のケアを提供することです。私たちは、患者さん、ご家族ががんと自分らしく取り組む方法を見出せるようお手伝いができればと願って活動をしています。
近年、医療の高度化細分化と同時に情報公開が急激に進み、インフォームドコンセントを前提としたがん医療が加速度的に導入されていますが、一方では、何でもインターネットから情報が手に入る未曾有の情報化社会に突入しています。患者、家族は多くの悪い知らせを聞き、情報を集め、理解し、価値観や将来の生活への影響を考慮に入れながら治療やその他多くの決断をしていかなければなりません。以前に増して、よりきめ細かな心のケア、そして人間全体に関心を払うことの重要性を強調していかなければならないと思っています。
この10年間の学会の歩みを振り返って見ますと、精神医学、心身医学、リハビリ学、心理学、社会学、倫理学などの専門家が会員として加わり、多職種の会員が年一度の学術集会やニュースレターで意見交換や学術報告をし、国際的にもサイコオンコロジーの科学的発展に寄与してきました。研究成果により、死を強く意識させるがんを前に一度は誰しも絶望の淵に追いやられ、その多くが自らを立ち直らせることができること、立ち直れない時には心のケアにより回復できることなどがわかってきました。また、サイコオンコロジーは、どういう心の状態やあり方が長生きをもたらすかなどの精神免疫学・行動科学研究や、がんを抱えた後いかに乗り越え成長するか、人生の意味、誇り、尊厳、希望をいかに取り戻し見出し維持するかなどの臨床研究に取り組んでいます。
現在、がん専門施設の過半数に、サイコオンコロジスト(精神科医、心療内科医、臨床心理士、専門看護師、作業療法士、ソーシャルワーカーなど)の活動が拡がっています。本学会では望まれる最適の心のケアを提供すべく、サイコオンコロジーの啓蒙活動、学術活動、サイコオンコロジストの教育訓練を行っています。サイコオンコロジーの発展のために一人でも多くの方にご入会いただくことを切に願っております。